三菱総合研究所「50周年記念研究 これからの50年で目指す未来」は、現在の日本で唯一、信頼のおける見識であると思う。
きっちりと、俯瞰的に日本の行く末を議論している。
これから、見ていくに際して、はじめてワクワク感を感じます。
まずは、目次です。
以下、三菱総合研究所ホームページからの引用です。
https://www.mri.co.jp/50th/columns/topics/no02/pdf/report.pdf
目次
はじめに
未来を予測する最良の方法は、未来を創ることである。これからの50年は、「豊かさ」と「持続可能性」の質的転換を果たし両立させる挑戦の期間となる。豊かさは経済的なものから一人ひとりのウェルビーイングを追求するものに、持続可能性は将来世代まで及ぶものとし、さらに安全安心な社会を形づくることが必要となる。この新たな「豊かさ」と「持続可能性」を実現するため、本研究成果を最初の一歩として未来に向けて踏み出していきたい。
「一人ひとりのウェルビーイング(心身の健康/幸福)」を基礎に置いているところは正しく、さすがだと思います。
ただ、「「豊かさ」と「持続可能性」を実現する」のは何のためかについて言及されていない。
それは「ウェルビーイング(幸福)のため」でしかない。
この目標が明確に意識されていないから、今後の議論が分りづらいものになっていく。
この項でも、「「豊かさ」と「持続可能性」」は「ウェルビーイング(幸福)」傘下に入る概念である。
それが、並行して述べられていることで、「ウェルビーイング(幸福)」が目指すべき頂点であるのにも関わらず、何が目指す頂点なのかが曖昧になり、視野がぼやけてしまう。
第 1章 100億人・100歳時代の豊かさと持続可能性
100億人全てが豊かさを実感できる社会を構想しなければならない。そのためには、豊かさの定義そのものを、資源の濫らん用ようを伴う「量的な成長」から、人が生み出す価値に着目した「一人ひとりのウェルビーイング」へと進化させることが重要だ。
「量的な成長」から、人が生み出す価値に着目した「一人ひとりのウェルビーイング」。
の視点は良いと思う。
しかし、「「ウェルビーイング(幸福)」が目指すべき頂点である」という確固とした理念が描かれていないから「豊かさ」の意味も着地できずに空中を漂ってしまい、行方不明となる。
これから50年の潮流──「制約」と「拡張」
図表1-1
今後50年の方向性今後50年の潮流
制約:持続可能性の危機の深刻化
① 100億人がもたらす環境制約による資源(水・食料・エネルギー・鉱物)の限界
② 頻発・大規模化する災害・リスクによる人・社会活動の制約拡張
拡張:技術による人・社会のパラダイムシフト
① 人間:100歳時代の活き活きとした健康、活動、コミュニケーションの実現
② 社会:仮想空間の拡張から、現実×仮想空間の融合へ
⇓
人のこれから
現在ある労働の多くがAI・ロボティクスにより代替
革新技術が人の能力を拡張、新しい可能性を拡大
社会のこれから
現実空間のさまざまな制約条件を乗り越え、次世代への持続可能性を実現
仮想空間が新たな活躍の場として拡大、現実空間と融合
図表1-1 は、これからの変化を無機質に予想として述べている。
本来は、”「こうあるべきという価値観」を明確にして、それへ到達する道を探る。”という述べ方にすべきではなかろうか。そのための資料として、変化の予想を位置づけるべきだと思う。
また、「人のこれから」「社会のこれから」は「拡張」の項目の中に記載すべきだろう。わける意味が不明である。
「現在ある労働の多くがAI・ロボティクスにより代替」はいいところに着目していると思う。
ここの部分が、今後の社会では大きな影響をもたらすと思う。
人間の代わりにロボットが働く社会である。
利益の配分はどうするのか、働く必要がなくなった人間はどのように人生を送ればいいのか、完全なベーシックインカム時代の到来になる。
以降、この部分の詳述を期待します。
「一人ひとりのウェルビーイング」を追求する豊かな未来
これまで豊かさは、特に20世紀においては、経済的な成長や物質的な充足が社会の大きな目的であった。
しかし物量を基本にした豊かさの追求は、必然的に地球資源の消耗につながり、長期的には人間にとってかけがえのない生存基盤である地球環境を決定的に毀損する。
それを避けるにはSDGsにおいても目標となっている貧困、飢餓などを乗り越え、「量的な成長」から「質的な成熟」へ、豊かさの概念を転換することが不可欠だ。
これからの50年で人類が目指すべきは、個人が主役となりだれもが他者との共創を通じて創造力を発揮し、精神的な豊かさを実感しながら暮らせる未来である。
その実現のために、「一人ひとりのウェルビーイング」を中心に置いた社会設計が求められる。
私の持論と同等のことを述べている。
コトバだけでは分かりづらいので幸福方程式(https://shakai.cyou/幸福方程式/)に当てはめてみる。
個人の幸福= f(肉体健康度, g(自己肯定感、気持ち環境度)) –③
肉体健康度に含まれる要因:「地球環境を決定的に毀損」「貧困、飢餓」
自己肯定感に含まれる要因:個人が主役となりだれもが他者との共創を通じて創造力を発揮
気持ち環境度に含まれる要因:他者との共創
本書の部分を、幸福方程式をコトバで表現している。
ただ、「気持ち環境度」に対する言及が手薄に思える。
このように、幸福方程式は、人間の全体像を分析するには有効なツールと思える。
ウェルビーイングとは、もともと1948年に世界保健機関(WHO)憲章の前文に使われた言葉で、
「人が身体的だけでなく、精神的にも、社会的にも良好な状態」という広義の健康概念を指すものだ。
現在は、より幅広い人のQOL(生活の質)や幸福を示す概念として使われており、たとえばOECD(経済協3力開発機構)は2011年に11項目のウェルビーイング指標(Better Life Index)を公表し、経済的な指標ではこぼれ落ちてしまう個人の主観まで包含した「QOL」「幸福」の指標化に取り組んでいる。
上記の文章を幸福方程式で解釈します。
個人の幸福= f(肉体健康度, g(自己肯定感、気持ち環境度)) –③
肉体健康度に含まれる要因:身体的良好な状態
自己肯定感に含まれる要因:精神的良好な状態
気持ち環境度に含まれる要因:社会的良好な状態
※気持ち環境= 自分と他者間(家族・社会など)で授受しあう影響
個人の幸福:ウェルビーイング指標(個人の主観まで包含した「QOL」「幸福」の指標化)
「ウェルビーイング指標」は、肉体健康度、自己肯定感度、気持ち環境度、が幸福感を感じさせる
ある閾値を超えたときに発動する主観であり、個人の幸福度である。
この場合も、幸福方程式は有効な働きをしていると思う。
「コトバで書かれた数学を数式に置き換え、全体像を容易に認識できるための方程式」と同様の役目を担っていると思う。
何ページにもわたりコトバで書かれた論文を、一行の方程式で表すことができ、その論文の過不足を浮彫りにすることができると思う。
本研究においては、未来のウェルビーイングにおいて重要な役割として、3つの要素に着目した。
まず、ウェルビーイングの基本が健康だ。
これは、病気がない状態を指すのではなく、一人ひとりが年齢や障がいの有無にかかわらず、心身に潜在している能力を生涯にわたって思う存分活かすことができる状態を指す。
その実現には技術が大きな役割を果たすことはいうまでもないが、同時に今後実用化される革新技術、それを活用した新たな生き方を社会で受容する文化の醸成や、それを支える制度の構築を並行して進めることも重要になる。
健康には、体と心の2つがあることを明確にしていない、重要な単語だから、明確にすべきであろう。
「その実現には技術が大きな役割を果たす」と述べているが、「その実現」とは、健康の実現をいっているのだろうか。それなら、技術と同等に健康に留意する日常生活の実施を強調すべきであろう。
他者とのつながりも、ウェルビーイングの重要な要素である。
今、地縁や血縁をベースとした旧来型コミュニティによるつながりが弱くなる一方で、デジタル化の進展で現実空間と仮想空間をまたぐ新たなコミュニティが無数に誕生しつつある。
今後の技術の進展は、人と人とはもちろん動物や植物など種を超えた存在とのつながりも広げていくだろう。
ただし適切な社会制度がなければ、豊かなつながりの恵みを享受できるのは一部の特権的な層に限られてしまうおそれもある。
社会全体の健全なつながり構築のためには、技術の進展にただ任せるのではなく、望まぬ孤立や孤独を防ぐ仕組みを社会に実装することが重要だ。
個人方程式で分析する。
個人の幸福= f(肉体健康度, g(自己肯定感、気持ち環境度)) –③
※気持ち環境= 自分と他者間(家族・社会など)で授受しあう影響
ここではまさに「気持ち環境度」の重要性が述べられている。
AIやロボティクスによる労働代替が進み、医療技術の進歩で健康長寿が実現すれば、未来の人類はかつてなく多くの自由な時間を手にすることになる。
それを人にしかできない創造的な活動に充て、自己実現を図ることができれば、個人のウェルビーイングは大きく向上する。
これまで当たり前だった「少・青年期の教育→壮年期の就労→老後の余生」といった単線の人生だけでなく、学びや就労を自由に行き来することで、個人に潜在する多様な能力を人生のあらゆるフェーズで開花させることができる複線的な生き方がスタンダードになる社会への転換を実現しなくてはならない。
健康、つながり、そして自己実現。それらの同時実現こそがこれからの50年に私たちが目指すべき「豊かさ」なのだ。
幸福方程式で分析する。
個人の幸福= f(肉体健康度, g(自己肯定感、気持ち環境度)) –③
※自己肯定感とは、自己実現する程度ごとに得られる。
自己実現とは、夢中になれる対象に挑み、その対象の極致に至ること
(例えば、夢中になれる対象がバイオリンで音楽演奏することで、バイオリン演奏を通して音楽表現の極致を実現する)
ここでは、幸福方程式の「自己肯定感」を「自己実現」として述べられている。
最後に
「健康、つながり、そして自己実現。それらの同時実現こそがこれからの50年に私たちが目指すべき「豊かさ」なのだ。」
と述べているが、これはまさに、幸福方程式でいう「肉体健康度、気持ち環境度、自己肯定感」のことである。
全くの同感である。
「地球1個分」の成長が維持できる持続可能な未来
約半世紀前、D・H・メドウズらは『成長の限界』(1972)で、世界人口や工業投資がこのままのペー
スで増え続ければ100年以内に資源を使い果たし、成長の限界と深刻な環境問題に見舞われると予測した。この指摘が、気候変動とともにあらためて現実味を帯びて私たちの目の前に迫ってきている。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が2018年に公表した「1.5℃特別報告書」では、地球温暖化を抑えるには工業化以前からの人為起源のCO2の累積排出量を抑えることが必要で、50%の確率で気温上昇を1.5℃に留めるために今後許容されるCO2排出量(残余カーボンバジェット)は約580~約770GtCO2とされている(図表1-2参照)。
他方、国際エネルギー機関(IEA)序章によると、すでに建設されている設備やインフラが、残された耐用年数の間に現状と同様に稼働すると想定した場合、累積CO2排出量が750GtCO2に達すると予測している。
つまり、既存設備、インフラだけで残されたカーボンバジェットが費やされてしまうおそれがある。
気候変動は農作物の収量減少や質の低下を引き起こし、食料の安定供給を脅かす。
さらにその影響は、自然災害の規模や発生数の増加、居住可能地の縮小、感染症パンデミックの高頻度化などさまざまな形で表れ、人や社会の活動に大きな制約を課すことになる。
各資源における環境負荷を総合的に評価する指標にエコロジカル・フットプリントがある。人の暮らしに必要な食料や物資を生産するための耕作地や森林などの面積(グローバルヘクタール)と、社会・経済活動によって排出されたCO2を吸収するために必要な生態系サービスの総量を面積に換算したものだ。
世界のエコロジカル・フットプリントは、1970年に地球の環境容量(バイオキャパシティ)を超過し、2016年時点でバイオキャパシティの約1.69倍に相当する205億グローバルヘクタールに達している(図表1-3参照)。地球は、50年前から持続不可能な状態に陥っているのだ。
早急に実現しなければならないのは、大量生産、大量消費、大量廃棄型社会から脱却し、資源消費を「地球1個分」の持続可能な状態に引き戻すことだ。
しかしそのために利便性や快適性を損ない、人々に我慢を強いるとしたら、過去への退行になってしまう。
革新的技術を最大限に活用して生活の質を上げつつ、経済や社会システム、ライフスタイルを改革し、環境負荷の少ない持続可能な成長を志向することが重要である(図表1-3参照)。
持続可能性の観点からもう一つ大事なことは、自然災害や感染症など今後のリスクに対する備えを進めることである。
気候変動、感染症のような将来リスクの発生に対しても、社会や生活の継続性が保たれることは、安全安心という社会の持続可能性の要素としても重要である。
かなり、差し迫っている危機の実感を感じる。
※「図表1-2 累積CO2排出量と気温上昇の相関」
「図表1-3 エコロジカル・フットプリント、バイオキャパシティの推移(世界)」
に対し、このデータに反対する科学者の意見もみて、客観的な信ぴょう性を確認する必要がある。
(世界のエコロジカル・フットプリントなど、どのように算出しているのか、など)
コラム 地球資源の持続可能な活用に向けて
地球資源の持続可能な活用に向けて銅資源の将来世界人口が100億人に達する50年後、鉱物資源の供給がひっ迫する可能性がある。
とりわけ、代表的なベースメタルである銅の状況は深刻である。
銅は、社会インフラから生活必需品まで広範に利用される一方、地表近くに少量しか存在せず採掘量に限界がある。
埋蔵全体量が多い鉄やアルミニウムと異なり、このままでは2020年比で約2倍にも及ぶ50年後の需要に対応不可能となる。
増加する銅需要を満たす手段としてリサイクル率の向上が第一であるが、それのみでは十分でなく、銅の含有量0.1%未満の低品位な銅鉱石の利用にも着手せざるを得ない。
その結果、銅鉱石の採掘から精錬までのエネルギー消費量が急増し、持続的な銅の利用が困難となる。
方策としては、銅製品の寿命延長と需要低減が考えられる。
しかし、寿命延長では仮に寿命を1.5倍に延長して新規需要を抑えても、2050年以降は低品位鉱石の利用に着手せざるを得ない。
また、銅製品を大切に長く使う寿命延長はエネルギー消費量の観点からは得策ではない。
一方で需要低減の場合、仮に年率0.3%のペースで削減すれば、需要抑制の効果は寿命延長に比べて劣るものの低品位鉱石の利用開始を遅らせ、エネルギー消費量を抑制できる(図表1-4参照)。
このことは、寿命延長によらない需要低減の重要性を物語っている。
具体的な取り組み例としては、銅管を鉄やプラスチックで置換するなどの素材代替、銅線に代わり無線技術を採用するなどの機能代替が考えられる。
無論、リサイクルを最大限行うことも重要であり、利用頻度の少ない銅製品のリサイクル促進、リサイクルしやすい銅製品の設計などが考えられる。
こうした論考は鉱物資源全般に通じる。
エネルギー消費も含めたトータルな資源最適化戦略は内外を問わず重大な命題といえよう。
長く使うという寿命延長に固執せずにデータに基づき最適解を追求し、食料・水・エネルギー・素材など互いに連関する各資源の持続可能な活用を図ることが求められる。
銅資源について、唖然とします。
このような重大な身近に迫る危機を知りませんでした。
私以外の多くの方々も、この事実は知らないのではないでしょうか。
結構、身近にある深刻な危機なんだあ。
こんな身近な重大な危機、世界的に、日本的に、どうするつもりなんだろう。
身近な危機にある他の資源はどうなってるんだろう?
低含有量の銅を巨大エネルギーで精錬などしないのではないか。
それでつくった銅の価格は非常に高価になるだろう。
銅の価格が上がり、使われなくなり、銅を使用できる量の限界値、価格の限界値で、経済発展も止まるのだろう。
それはそれでいいのではなかろうか、その方がいいのではなかろうか。
銅の限界値で、経済発展が平行値になるのは、地球存続のためにもいいのではなかろうか。
「目指す未来社会」実現のための「5つの目標」
資源や環境の制約を乗り越え、人類の能力を拡張し、豊かで持続可能な未来社会。それは具体的には、
A) 心身の潜在能力が発揮され、
B)他者や社会とつながりながら、
C)一人ひとりが自己実現を達成する。
この3要素が満たされて豊かさや幸福、つまりウェルビーイングを享受できる社会といえるだろう。
そして、当然ながらこうしたウェルビーイングは、生存基盤である地球環境と、人類が築いた社会が将来にわたって持続できることが前提となる。
すなわち、
D)社会の安全安心と、
E)地球の持続可能性が担保された持続可能性のある生存基盤の上に、
100億人がそれぞれの人生でウェルビーイングを達成できる社会こそが、私たちが目指す社会像といえる(図表1-5参照)。
以上の観点から、本研究では以下の「5つの目標」を「目指す未来社会」の必要条件として設定する。
目標A[健康維持・心身の潜在能力発揮]革新技術の恩恵を均等に享受し、だれもが心身の潜在能力を発揮し健康な生活を持続的に送れることを目標とする。病気の予防や超早期発見、遠隔医療、身体拡張などの革新技術を社会に取り入れて新たなヘルスケアインフラを構築し、だれもが心身の潜在能力を発揮して健康な生活を送れる社会、さらには医療・介護保険制度改革によって制度の持続可能性を高める社会を目指す。
目標B[多様性の尊重とつながりの確保]コミュニケーションの多様化のなかで、個人や地域の多様性を尊重・包摂し、他者とのつながりを保ち続けることを目標とする。仮想空間の拡大などのコミュニケーションテクノロジーの進化により人と人とのつながりが多様化するなか、一人ひとりが生涯を通じて豊かなつながりを保つことができ、共創による社会全体の活力も向上する社会を目指すとともに「つながり弱者」の孤立を防ぐ。
目標C[新たな価値創出と自己実現]革新技術で創出された時間を活用し、一人ひとりが能力・意思に応じてさまざまな形態で自分の価値を実感し自己実現できることを目標とする。人はAIやロボットと競合するのではなく協調・分担し、革新技術が生み出した余剰時間や付加価値は適切に配分される。そして、人は人ならではの価値を発揮できる労働や社会と関わる活動に取り組み、一人ひとりが望み通りに多様な価値を創出しながら、自己実現が図れる社会の実現を目指す。
目標D[安全安心の担保]地球環境変化や仮想空間の拡張に伴うリスクが拡大するなかで、自然災害、感染症、仮想空間上の新たなリスクに対する安全安心が担保されることを目標とする。今後生まれてくる多様なリスクに備えることで社会の破綻が回避され、安心が担保されることを目指す。
目標E[地球の持続可能性の確保]地球資源の収支ゼロを実現し、地球から享受する豊かさが将来世代にわたって担保されることを目標とする。現世代の経済成長のために未来に負債を残す構造から「地球1個分」での成長を実現し、将来世代にわたり地球から享受する豊かさの担保を目指す。
当方と、ほぼ同じ考えが記されているので勇気をもらえた気がします。
ただいくつか気が付いたところがあります。
・「5つの目標」での各目標表現が、前半の「A)~E)」と後半の「目標A~目標E」では微妙に違うため、目標がぼやけ、どちらが目標なのか戸惑いを受け、インパクトが弱くなっています。
より、シンプルな「A)~E)」の表現に統一した方がいいと思われます。
・「目標A~目標E」は述べていることは、読むときは分かるのだが、頭に入らず、右から左に抜けていく。
原因は、主張が構造的になっていないからだと思う。
ウェルビーイング(幸福)を構成する要素を、身・心(体・感情)の2つの分野を明確に分割して、身・心(体・感情)ごとに説明を加えた方が俯瞰的に理解しやすいように思います。
ウェルビーイング(幸福)を構成する要素を、身・心(体・感情)の2つの分野を明確に分割する意図で、本書で述べている内容を書き直してみます。
<一人ひとりのウエルビーイング>
A) 心身の潜在能力が発揮され、
目標A[健康維持・心身の潜在能力発揮]
・「健康維持」は心身に分けて述べるべき
・「心身の潜在能力発揮」は心身に分けて述べるべき
ただ、分けると、身の潜在能力発揮、とは意味不明な気がする。
オリンピック選手にでもなるというのか、健康と関連するのか、不明、故に削除します。
つまり、下記のように書き換えます。
目標A[心の健康維持・身の健康維持・心の潜在能力発揮]—①
B)他者や社会とつながりながら、
目標B[多様性の尊重とつながりの確保]
・他者、社会、多様性の尊重、つながり、と類似コトバが多すぎるので「他者とのつながり」に統一。
このつながりの目的は、心の潜在能力発揮、と、心の健康維持、に分けて述べるべき。
つまり、下記のように書き換えます。
目標B[他者とのつながりの確保(心の潜在能力発揮、と、心の健康維持、のため)]
C)一人ひとりが自己実現を達成する。
目標C[新たな価値創出と自己実現]
・「新たな価値創出と自己実現」は、「自己実現」とする。
「心の潜在能力発揮(目標B)」「自己実現」「新たな価値創出」の関係性は以下である。
「心の潜在能力発揮(目標B)」し、「自己実現」した結果、「新たな価値創出」が得られる。
そして、「自己実現」が「心の自己肯定感」に転化してウェルビーイング(幸福)を引き起こす。
また、「自己実現」した結果の新たな価値創出は、身の健康(肉体健康度)、にも貢献します。
・「心の潜在能力発揮(目標B)」
|
・「自己実現」 —「心の自己肯定感」
|
・「新たな価値創出」
幸福方程式 ー個人の幸福= f(肉体健康度, g(自己肯定感、気持ち環境度)) ーで理解すると
・「自己実現」は「自己肯定感」へと転化する
・「新たな価値創出」(新技術など)が「肉体健康度」増進のため寄与する。
そのため「新たな価値創出」(新技術など)は幸福方程式の社会デザインに含める。
社会デザイン方程式=S(p,e,l,・・・)
この中の変数に「新たな価値創出」を含める
つまり、元の目標を下記のように書き換えます。
目標C[心の自己肯定感]
以上の考察で、目標の重複している箇所を削除し、再構成しなおすと、次のようにまとめることができます。
<一人ひとりのウエルビーイング>
目標[身の健康維持・心の健康維持(自己肯定感・他者とのつながりの確保)]
これは、幸福方程式と同一のものになります。https://shakai.cyou/幸福方程式/
個人の幸福= f(肉体健康度, g(自己肯定感、気持ち環境度)) –③
<持続可能性>
D)社会の安全安心と、
目標D[安全安心の担保]
E)地球の持続可能性が担保された持続可能性のある生存基盤の上に、
目標E[地球の持続可能性の確保]
・目標D[安全安心の担保]と、目標E[地球の持続可能性の確保]は[安全安心の担保]で纏めれる。
これは、幸福方程式の社会デザイン方程式⑦と同一のものになります。https://shakai.cyou/幸福方程式/
社会デザイン方程式=S(p,e,l,・・・) —⑦
以上の様に、本書で述べているウェルビーイング(幸福)と、当方の幸福方程式は同値のものです。
ただ、当方の幸福方程式が優れているところは、ウェルビーイング(幸福)が創出さる条件を、心身に明確に分け、また、個人レベルと社会レベルを明確に分けて論じ、心理学に裏付けされた、実感を伴うものとして提示しているところだと思います。
本書の様に、下記提示されても、ウェルビーイング(幸福)を構成する要素が果たして網羅されているか、必要十分なのか、不明です。
思い付きの構成要素の感があります。
提示要素の相互関係が不明。
何を基準にこの要素を挙げているのか、不明。
不明だらけで、結局、何を言いたいのか不明になってしまっていると思います。
最終到達点(私は「幸福」のみが最終到達点と思います)は何なのかを明確に宣言し、そこに到達するための方法はどうするのかを明示し、より、構造化されたレベルで表現しなくてはいけなかったのではないかと思います。
<本書によるウェルビーイング(幸福)を構成する要素>
目標A[健康維持・心身の潜在能力発揮]
目標B[多様性の尊重とつながりの確保]
目標C[新たな価値創出と自己実現]
目標D[安全安心の担保]
目標E[地球の持続可能性の確保]
————–
以上、いかがでしょうか。
「自律分散・協調」の実現
「5つの目標」は、相互に深く関連し合うものだ。
これらを同時に実現し、一人ひとりの豊かさと、社会や環境の持続可能性が両立させるためには、既存の社会の仕組みや、あり方そのものの見直しとアップデートが必要だ。
そのカギを握るのが「自律分散・協調」への転換である。
世界中で多方面に深刻な影響を与えた新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが、その転換のための大きな契機となりつつある。
近代以降の社会では集中を駆動力として発展してきた。経済合理性に基づいて大都市に人口と社会インフラを集中することで産業を集積し、規模の力をテコにして急速な経済成長を果たしてきたのだ。
一方、これからの50年における「豊かさ」と「持続可能性」の実現のためには、社会全体を集中から分散の方向に大きく舵を切る必要がある。
社会全体の大都市集中から地方への自律分散への転換、自律した一人ひとりが多様な自己実現と価値創出を可能とする社会である。
コロナ禍においては、これまで合理的とされてきた社会システムの脆弱性が露呈し、短期間でこれま での常識が大きく転換することとなった。
企業は、経済効率最優先で構築されてきた一極集中型のビジネスモデルやサプライチェーンの見直しを余儀なくされ、個人の働き方や暮らし方においても、急速な デジタル化を追い風に分散化が加速している。
企業の社会的責任がクローズアップされたり、
医療従事者をはじめとするエッセンシャルワーカーや、
限りある人的・物的資源の適切な配分に社会的関心が集まるなど、
利他的視点の重要性も再認識されている。
インターネットに代表されるICTの爆発的な普及は個人同士の直接的な結びつきをかつてないほど容易にし、一人ひとりが自律して活動することの可能性が大きく広がってきている。
自律した個人の多様 な価値観・能力を受容し、
あらゆる場所に分散した人やコミュニティが自由につながり合い、協調して 社会的活動を担いながら継続的に社会的価値を生み出していくことの重要性は今後ますます高まってい くであろう。
「一人ひとりの豊かさと、社会や環境の持続可能性が両立させる」という考え方は間違っていると思います。
「一人ひとりの豊かさを唯一の目標として、それを達成するための手段として社会や環境の持続可能性を実現する。」というべきだと思います。
この根本部分の認識が間違っているので、論文全体にしまりがない気がします。
「「自律分散・協調」への転換の契機が新型コロナウイルス感染症」と言っていますが、新型コロナウイルス感染症、という個別の事象ではなく、人間全体の観点から「自律分散・協調」を推進すべきかと思います。
「自律分散・協調」を主張する理由は、人が成長する際、自然が身近に在り、その中で育まれていくことが人間の感性に良い影響を与えるからなのだと思います。
また、地産地消理念に基づき、電力供給・物資の移動などのエネルギーを削減するために自律分散が必要だと思います。
「利他的視点の重要性」を述べているが、その根拠が意味不明であります。
限りある人的・物的資源の適切な配分に社会的関心が集まる、などをその根拠に挙げていますが、意味不明であります。
「利他的視点の重要性」は重要な概念なので、もっと、パワーのある意味づけをしてほしいと思います。
ここの部分は、倫理学などの視点から意味づけをすべきかと思います。
「自律分散・協調」の根拠をより鮮明に、大局的観点から打ち出さなくてはいけないと思います。
また、本書の筋道から外れることなく、「5つの目標」達成のための方法として、「自律分散・協調」を述べなくてはいけないが、「自律分散・協調」と「5つの目標」との関わりが不明である。「自律分散・協調」が独り歩きしてしまっている。これでは本書の筋道から外れ、混乱する。
そもそも、
「これからの50年における「豊かさ」と「持続可能性」の実現のためには、社会全体を集中から分散の方向に大きく舵を切る必要がある。」
と述べているが、結果だけで、その理由が見当たらない。また、唐突に「利他心」が出てくる。
残念ながら、筆者の混乱した頭脳を、そのまま押し付けられている気がする。
もっと、理論的に整理してから情報を発信してほしいと思う。
幸福方程式に置きなおしていうと(社会デザイン方程式=S(p,e,l,・・・)—⑦)
ここで言いたいのは、社会デザイン方程式のうち、「自律分散共創」関数になるのであろう。
本書では、個人レベルの話と、社会レベルの話しが明確に分けて説明してないから、混乱をもたらす。
わたしの理解能力が足りないのか、三菱総研の能力が足りないのか、双方ともなのか、第2章を突破するまで時間がかかってます。
第 2章 未来社会実現の2つのキーファクター
「豊かさ」と「持続可能性」を両立させる「3X」と「共領域」
前章で掲げた「5つの目標」を達成し、「豊かさ」と「持続可能性」が両立した未来社会を構築するための2つのキーファクターとして、本研究では、人間と社会を拡張する強力なドライバーである革新技術による変革である「3X」の活用と、人々が協調して新たな価値をつくり上げていく未来のコミュニティである「共領域」の構築を提案したい。
「3X」とは、さまざまな領域における技術群がもたらす3つの変革を指す。
現在、AIやIoTといったデ ジタル領域の技術群によるDX(デジタル・トランスフォーメーション)がビジネスや生活を大きく変え ていることは周知の通りだ。
同様に、人の健康、農業や自然、動植物など、生命活動を広く対象にする バイオやライフサイエンスの領域でも、数々の技術革新が進んでいる。
そして、さらにその先にはデジタルとバイオが融合した新たな技術領域も萌芽しており、言葉を介さない意思疎通や、物理的に離れた 相手と味覚や触覚を共有する技術の研究も盛んに行われている。
本研究では、これらをそれぞれBX(バイオ・トランスフォーメーション)、CX(コミュニケーション・トランスフォーメーション)と名付け、DX とともに「3X」として、未来創造のドライバーに位置付けた。
「3X」がもたらす革新の本質は、技術を活用した効率性や生産性の追求ではなく、一人ひとりが潜在能力を発揮して新たな価値やつながりを創出し、人と社会の「豊かさ」と「持続可能性」を実現するこ とにある。しかし、これからの新しい技術には、人の自律性を高めると同時に、孤立や分断を加速させ る作用、さらには人そのもののあり方に対する倫理的な課題もあることに十分な留意が必要だ。革新技術をどのように使うか、意思が問われる時代となる。
かつては特定の地域内に閉じ、地縁や血縁で強固につながったコミュニティが人の生活の基盤となっていた。
そして、工業化社会ではこれに会社組織を主体とする社縁によるつながりが加わり、生活を支えるコミュニティとして大きな役割を果たしてきた。
これらのコミュニティは、目的を一にした共同体 である。
しかし今、世界中の人と人が直接つながることを可能にしたインターネットの普及とともに旧来のつながりは希薄化した。
さらに、新型コロナウイルスの感染拡大が従来のつながりに大きな制約を課したことが、その流れをさらに加速させている。
都市から地方へ、現実空間から仮想空間へ、他律的な組織から自律的な個へ──。
自律分散化はさまざまなレベルで進み、もはや止めることのできない大きなトレンドになっている。
こうした自律分散化の流れは新たな未来社会を構築するうえで重要な要素となるが、個と個が単につながるだけでは、いわゆるフィルターバブルやエコーチェンバーといったタコツボ化の弊害が危惧され、 行きすぎれば孤立や孤独、社会的な分断を招きかねない。
そこで、従来のコミュニティとは異なる形で人をつなげ、新たな価値を生み出していくための未来の コミュニティを構想することが重要になる。
それが「共領域」だ。それは、
1)一人ひとりがやりたいこと(=自己実現)を探すことができ、
2)人々が協調、共創して価値を生み出し、
3)その価値を社会において提供・交換できる仕組みである。
個を調和させるための新たなる共のデザインといえる。
従来の地縁、血縁、社縁に内包されていた空間的制約を飛び越え、世界中の人々と自由につながり、経験を 共有し、一人ひとりの能力を組み合わせてこれまでにない価値の共創と交換を可能にする。
この結果、 地域コミュニティは将来的に衰退して消滅するのではなく、「3X」・「共領域」により再興するのである。
分散から、分断ではなく協調を生むために重要な役割を担うのだ。
豊かさと持続可能性の両立に不可欠な「自律分散・協調」は、「3X」と「共領域」の2つを組み合わせてこそ完成するといえる(図表2-1参照)。
何を言いたいのか分かりずらいです。
まずは、本論の「「豊かさ」と「持続可能性」が両立した未来社会を構築する」という根本姿勢が誤っていると思います。
正しくは、「幸福(豊かさ)を唯一の目標にし、他(持続可能性を含める)はそのための方法論である。そして、それを論ずるには心身の2つのレベルから考察をすすめる」ということを明確に意識していないため、論考が曖昧になっているように思います。
「豊かさと持続可能性の両立に不可欠な「自律分散・協調」は、「3X」と「共領域」の2つを組み合わせてこそ完成するといえる」と、本書で述べているが、このようにつぎはぎに述べずに、「5つの目標実現」にとって「自律分散・協調」「3X」「共領域」がどの様に機能するかをまとめて、説明すべきである。
図表2-1、にしても、「自律分散・協調」「3X」「共領域」のうち、「自律分散」が抜けています。
ほんとに、混乱の極致です。
「「自律分散・協調」は、「3X」と「共領域」の2つを組み合わせてこそ完成するといえる」というのは間違いである。
「自律分散・協調」は初めから、幸福方程式の「自己肯定感、気持ち環境度」に装着されている。
※ここでの自律は個の自律を意味してる
※「都市から地方へ、現実空間から仮想空間へ、他律的な組織から自律的な個へ」と述べられているように「個と社会」が並列に述べられているからわかりずらい。区別して述べるべきである。
「都市から地方へ、現実空間から仮想空間へ、」は、社会デザインとして別途言及すべきである。
「5つの目標」と同値の幸福方程式(個人の幸福= f(肉体健康度, g(自己肯定感、気持ち環境度)) –③)で、3Xと共領域、を説明すると、
3Xと共領域は③式における3変数(肉体健康度, 自己肯定感、気持ち環境度)の値を増大する働きがある。というだけである。
「5つの目標実現」にとって「自律分散・協調」「3X」「共領域」がどの様に関連するのか、というまとまりのある説明が無い。
残念ながら、筆者の混乱した頭脳を、そのまま押し付けられている気がする。
もっと、理論的に整理してから情報を発信してほしいと思う。
わたしの理解能力が足りないのか、三菱総研の能力が足りないのか、双方ともなのか、読み解くまで時間がかかってます。
大局的観点から見通し、記述することが全くできていないように見えてしまいます。
この無様な論文がが、三菱総研の総合力ですか?
三菱総研にしてこの体たらくを見るにつけ、日本の将来が不安になるのも故無し、の感がぬぐいません。
以降は大局的観点が不要な個別の説明なので、少しはマシになることを期待したいと思います。
(言いすぎでしょうか、わが身も振り返らず、頑張ってほしい気持ち故のキツイ発言になってしまいました。)
3X 個の能力を高め、つながりを生む未来創造のドライバー
未来社会構築のための第一のキーファクターは、個の能力を高め、多様なつながりを生み出す「3X」、つまり日々進化を続ける革新技術群がもたらす3つの革命だ。「3X」を構成するデジタル・トランスフォーメーション(DX)、バイオ・トランスフォーメーション(BX)、その両者の融合領域から生まれるコミュニケーション・トランスフォーメーション(CX)の概要を以下に示す(図表2-2参照)。
デジタル・トランスフォーメーション(DX)
AIやIoTなどのデジタル技術とビックデータの活用によって社会に変革をもたらすDXは、今、最も注目かつ必要とされている。
すでに画像認識、音声認識、自動運転など、さまざまな分野においてAIが社会に実装され活用されている。これらのAIは、利用目的が特定領域に限定された特化型AIと呼ばれる。
一方、今後50年では、多様な用途に対応できる汎用性とみずから考え行動できる自律性を備えた汎用型AI開発への期待も高まる。汎用型AIの実現時期はさまざまな論があるが、高度なAIが普及すれば、人は煩雑な作業から解放される一方で、AIを使いこなし、より深い思考力や想像力、高度な判2断力を発揮することが求められるようになる。
また、ロボットもAIやIoTと連動して性能が向上し、AIと同じく特化型から汎用型への進化が進むだろう。
2070年までにはセンサーが生活空間にあまねく設置されるようになり、一人ひとりのライフログ(生活・行動・体験の記録)が全て保存可能な時代を迎える。
現在、DXは企業活動や行政の効率化、生産性の向上に主眼が置かれているが、将来的にDXは、データによる人々の多様な価値の見える化、連鎖により豊かさを創出するための社会基盤として進展していく。
データ・情報を収集分析される力量は優れたものがあると思います。
しかしそれが、大局観を持たずに書かれると、めまいがします。
ただ、DXを個別に羅列してどうしようというんだろう、、、、
・汎用型AI開発(多様な用途、自律性)
・ロボットも汎用型
・人は煩雑な作業から解放
・より深い思考力や想像力、高度な判断力を発揮することが求められるようになる。
・ライフログが全て保存可能
・多様な価値の見える化、連鎖により豊かさを創出するための基盤(ウーン、意味不明)
DXを大局観の本質論の中での位置づけをせずに何をしようというのだろう。
「幸福」を唯一の目標に置かずに、著者は何に向かって何を書こうとしてるのだろう。
DXの定義を「デジタル化により社会や生活の形・スタイルが変わること」とする。
DXの意義は、人間の五感を拡張、社会での個人の意思疎通の効率化、である。
大局観たる幸福方程式個人の幸福= f(肉体健康度, g(自己肯定感、気持ち環境度)) –③)に拠ってDXを説明すれば、以下の様になるだろう。
DXは「自己肯定感」を得るための能力を増大させる。(人間の五感を拡張)
また、「気持ち環境度」を高めるための機会を増大させる。(社会での個人の意思疎通の効率化)
このように、DXの働きは既存の仕組みを拡張・強化する、それだけのことである。
バイオ•トランスフォーメーション(BX)
先端的なライフサイエンス、バイオ技術によって、疾病の予防や治療、老化防止(アンチエイジング)、 寿命延伸など、生命体としての人間の能力を拡張する革新がBXだ。
今後50年で平均寿命は確実に伸び、加齢で衰えた運動機能や知覚機能を補完する技術の普及で健康寿命も延伸していく。
AIやビッグデー タを活用した新薬開発や遺伝子治療、疾患のメカニズム解明が進めば難病の治療可能性も大きく広がる。特にがんは、超早期発見や精密医療、免疫療法などの進歩で30年以内に克服できる可能性がある。
一 方、認知症克服の明確な道筋は現時点でも見えておらず、身体は健康でも認知機能が弱い高齢者が増加 するリスクがある。
不老不死や超人的な能力を獲得するといったSF的な身体拡張技術は実現の目処は 立っていないが、再生医療は急速に進化しており、自分自身の細胞から3Dプリンターでさまざまな組 織を生成する技術の実用化は夢物語ではなくなっている。
絶対に替えの利かない臓器とされる脳ですら、 動物実験で神経組織の再生が確認されている。
アンチエイジングの分野でも、ブドウ糖や果糖と似た 構造の自然界由来の甘味料である希少糖の活用など、多くの研究が行われている。
脳科学の研究成果を基礎としたブレインテックも、今後大きな進展が期待される分野だ。
これまではTMS(磁気刺激治療)のような医療用途が大半だったが、ソフトウエアやデバイスで脳の状態を見える 化すれば、言葉を介さないコミュニケーションや、脳や心を意識的に制御できるようになる可能性もあ り、CXに大きな影響を与えると考えられる。
広く生命現象を扱うBXによる革新範囲は、人の身体能力の拡張に留まらない。
動物のわずかな細胞 から培養肉を生産したり、有機材料から3Dフードプリンターでさまざまな食品を生み出すなど、環境負荷を抑制しながら豊かな生活を実現する手段の開発という面でも期待できる。
データ・情報を収集分析される力量は優れたものがあり参考になります。
・生命体としての人間の能力を拡張する革新がBX
・難病の治療可能性
・自分自身の細胞から組織を生成する
・言葉を介さないコミュニケーション
・脳や心を意識的に制御できる可能性
・動物のわずかな細胞 から培養肉を生産
・有機材料から3Dフードプリンターでさまざまな食品を生み出すなど、環境負荷を抑制
しかし、これらの技術を全体像の中で位置づけて述べる力量が必要である。
コミュニケーション•トランスフォーメーション(CX)
DXとBXの融合によって、コミュニケーションの量と質に大きな革新をもたらすのがCXだ。
BXの項 目で触れたブレインテックはその中核技術の一つである。
2030年頃には、人の心や人間関係を工学的 にとらえるコミュニケーションエンジニアリングも進展することが予想される。
現在、デジタル機器を 介したコミュニケーションでやりとりできるのは聴覚情報や視覚情報が中心だが、ハプティクス(触覚 伝送)技術が発展すれば、湿度感覚や圧力感覚などの触覚情報も伝達可能になる。
脳波のサンプル分析 から感情を読み取る「感性アナライザ」などの感情可視化ツールも発展していく。
これまで空想でし かなかったテレパシーや「サトラレ」が現実になろうとしているのだ。
さらにCXが進化すれば、人と人のコミュニケーションに留まらず、他の生物やAIとのコミュニケーションにも広がる可能性があり、種を超えた共感や理解が広がっていく。
本研究では、DX/BX/CXをもたらす革新技術のうち、人間の身体能力、認知能力を拡張する人間拡張技術に着目し、今後50年間のロードマップを策定した9(図表2-3)。技術が実装される未来社会像を描いたうえで、現時点での要素技術の研究・開発状況を踏まえ、複数の要素技術を統合した技術・サー ビスとしての実装時期・レベルを評価している。
その際に、今後50年間における社会変化を踏まえた 技術・サービスの活用シーンを設定した。
対象とした人間拡張技術の活用シーンは、健康(心のサポート・予防行動・身体拡張)、
コミュニケーション(五感活用・情動誘発)、
労働・活動(労働負荷低減・仮想空間利用)である。
この研究結果より、今後50年で人間拡張技術は大きなブレークスルーが生じ、人と社会のあり方に大きな影響を及ぼすことが分かる。
障がいを意識させないロボット義肢、
人と機械の一体化により遠隔地からでもその場にいるように活動できるテレイグジスタンス技術、
五感を共有可能なテレコミュニ ケーション技術、
五感の相互作用により生まれる錯覚(クロスモーダル効果)を利用した情報技術、
他者の感覚・体験を共有・追体験できる技術等、
いずれも今後50年間において段階的に社会実装される 技術・サービスである。
これらの技術が社会実装されることにより、「3X」が加速する。
データ・情報を収集分析される力量は優れたものがあり参考になります。
しかし、これらの技術を全体像の中で位置づけて述べる力量が必要である。
・人の心や人間関係を工学的 にとらえる
・触覚情報も伝達可能
・テレパシーや「サトラレ」が現実
・他の生物やAIとのコミュニケーション
・障がいを意識させないロボット義肢
・テレイグジスタンス技術
・五感を共有可能なテレコミュニ ケーション
・他者の感覚・体験を共有・追体験
本書でのDX・BX・CXの分類に無理がある。
シンプルに現状の人間をベースに、その能力拡大としてDX・BX・CXを位置づければいい。
一例として、幸福方程式に依って以下説明します。https://shakai.cyou/幸福方程式/
個人の幸福= f(肉体健康度, 気持ち健康度)-①
全体の幸福方程式=F(S((f1,f2,f3.・fn,e) -⑤
※Sは社会デザイン関数
(法律・経済・情報伝達デザイン等含む)
・「肉体健康度」関連の拡張
BXの各項目が該当
・「社会デザイン関数」の情報伝達デザインの拡張
CXの各項目が該当
・DXはBXCXの基盤技術
このように、人間の全体存在様式の中での
DXBXCXを位置づけて語らないと、議論の現時点の位置が定まらず、行方不明となってしまう。
共領域 個が協調し、社会価値を共創する未来のコミュニティ
これからの50年においては、自立した個人が主役となった「自律分散・協調」への流れが重要となる。
「3X」がドライバーとなる「自律分散」の未来社会において、より深い自己実現と共創を生む「協調」へと向かわせる仕掛けが必要になる。
本研究で提案する「共領域」とは、現実空間と仮想空間を横断し て多様かつ複層的に形成される未来のコミュニティであり、一人ひとりの自己実現の探索とともに、 人々の共感・共創による価値創出と、それらの価値を提供・交換する場を実現するものである(図表2-4参照)。
コロナ禍は従来社会の問題点を浮き彫りにするとともにさまざまな変化を加速した。
現実空間の行動制約による仮想空間でのコミュニケーションの拡大、持続可能性への意識変化、利他的な行動の実践と いった意識変容や行動変容などである。
この流れを過去に戻さず、「共領域」を通じて、個人の活動を協調によって統合、発展させることが未来社会実現のカギになる。
そのためには、人、社会、技術を、 格差や分断を生むことなくつなぎ、社会に多様な価値を生み出す「共領域」が必要になる。
「共領域」とは人々が協調し持続的に社会発展し続ける未来社会の基盤なのである。
「自律分散・協調」への流れが重要となる。と述べているが、重要である説明がない。ただの思い付きなのだろうか。
「自律分散」とは、個人が?社会が?不明である。
現在でも、個が自立し、他者と協調、共創し価値を創出している、何か目新しい状況ではない。
既存の状況に対し、新たに加えるべき箇所を明確にしてほしい。
図表2-4、で共領域について「時空を超えて集まるコミュニティ」との説明があり仮想空間だけをイメージするが、本文では「現実空間と仮想空間を横断」と説明されている。このように、一貫性のない説明、言葉遣いは混乱を生むだけである。しかし、このような気遣いもしないのであろうか。残念である。
「共創」「協調」と類似の言葉が頻繁に出るが、それがこだまのように響き、印象が曖昧になる。
「共創」「協調」はまとめた表現にすべきだと思う。
以下の項目を有機的に結び付け、明確な全体像を身に沁みこませている方はいるのだろうか。
当事者の著者の方々の中にも明確な全体像を描けている方はいないのではないだろうか。
私は、ここしばらく、明確な全体像を描こうとしているが、功を奏しない。
私の能力が低いのか、そもそも、明確な全体像などないのか。
そう思ってしまうほどに、各項目の関係性が闇の中です。
関係性を結んでいくには
「個人の幸福」実現が目標
ー「個人の幸福」の構成要素の確認
ー個人を取り囲む環境(社会・自然)
を順に議論していくしかないと思う。
それに対し、本論文で、議論をしている順が下記である。
A 「一人ひとりのウェルビーイング」を中心に置いた社会設計が求められる。
B 健康、つながり、そして自己実現。
それらの同時実現こそがこれからの50年に私たちが目指すべき「豊かさ」なのだ。
C 「豊かで持続可能な未来社会」への「5つの目標」
D 「自律分散・協調」–(カギを握る)
E 「3X」と「共領域」–(キーファクター)
Aはまさに私と同一の視点である。
つまり、個人の幸福達成が目標で、それを成し遂げるための社会デザインを考察することだ。
※全体の幸福方程式=F(S((f1,・・fn,e))—⑤
Bはまさに私と同一の視点である。
つまり、個人の幸福の構成要素を述べている。
※個人の幸福= f(肉体健康度, g(自己肯定感、気持ち環境度)) –③
A/Bで十分である。シンプルで見通しが良い。
ここからが、複雑怪奇になっていく。
Cにおいて、A/Bの秀でた性質が汚され、意味不明なものになってしまう。
その原因は、Bに対し明確な分類ができていないことに発している。
つまり
健康:身体の健康
つながり:心の健康
自己実現:(結果、自己肯定感へとつながる)心の健康
というように、明確に分類すべきなのである。
ところが
「健康」が、目標A[健康維持・心身の潜在能力発揮]に変化してしまう。
「心身の潜在能力発揮」、など、不要である。
「身の潜在能力発揮」しての健康である。
「健康」の中に「身の潜在能力発揮」は含まれているのである。
不要の単語が増えれば増えるほど、注意力が分散し、意識が、焦点が定まらない酩酊状態になるのだ。
以下、目標B・Cも同様である。
目標D・Eは「社会設計」に含まれる項目の一部である。
一部のものを外部に出すことにより、これまた、意識が、焦点が定まらない酩酊状態になるのだ。
まして、「自律分散・協調」という、単語を増やして、読者が理解できないように混乱させようというのか。
「自律分散・協調」はA/Bの中で、位置づけられなくてはいけない。
というのは、本論文はA/Bが必要十分の項目であるからなのだ。
A/B以外の単語は全て、A/Bのどこかに含まれなくてはいけないのである。
さて、「自律分散・協調」はどうだ?
Aの社会設計の1要素として含まれるのか?
取り立てて、1要素に過ぎないものを強調する価値があるのか?
そうは思わない。
だから、また、混乱する。
まして、「3X」と「共領域」という、単語を増やして、読者が理解できないように混乱させようというのか。
「3X」と「共領域」はA/Bの中で、位置づけられなくてはいけない。
というのは、本論文はA/Bが必要十分の項目であるからなのだ。
A/B以外の概念・コトバは全て、A/Bのどこかに含まれなくてはいけないのである。
さて、「3X」と「共領域」はどうだ?
「3X」は個人と社会に関与する2つに分けて論じるべきであろう。
「BX」は主に個人の分野で個人の可能性拡張として、また、社会の分野で社会設計の食設計の拡張として論じるべきである。
「CX」は主に社会の分野で社会設計の情報伝達設計の拡張として論じるべきである。
「DX」は「BX」「CX」の基盤の一つとして論じるべきである。
A/Bの外に出て、独自に語ろうとするから、基本のA/Bが見えなくなり、戸惑い、意識の迷い子ができる。
「共領域」も同様である。
基本のA/Bの言葉を使い、その関連の中で論じなくてはいけない。
つまり、本論文は、A/Bの筋道の外に出て、独自に語ってしまっているから、もはや、誰に対してもこころに沁みる知恵をもたらすことはできないであろう。
残るのは、全体像から孤立した寂しい知識である。
なぜ、こんなことに労力と時間を使わなくてはいけないのか。
大きな期待とともに読み始めたのに、あまりに、全体像を理解できないからだ。
きっと、当事者の筆者達も全体像を理解できていないのだろう。
もうこれで、やめよう。
大きな期待を持つことは。
切り売りの孤立した寂しい知識に触れにいこう。
<参考>
(P7)「豊かで持続可能な未来社会」への「5つの目標」
豊かで持続可能な未来社会。それは具体的には
目標A[健康維持・心身の潜在能力発揮]
目標B[多様性の尊重とつながりの確保]
目標C[新たな価値創出と自己実現]
目標D[安全安心の担保]
目標E[地球の持続可能性の確保]
(P8)「自律分散・協調」
「5つの目標」は、相互に深く関連し合うものだ。これらを同時に実現し、一人ひとりの豊かさと、社会や環境の持続可能性が両立させるためには、既存の社会の仕組みや、あり方そのものの見直しとアップデートが必要だ。そのカギを握るのが「自律分散・協調」への転換である。
(P11)「3X」と「共領域」
「豊かさ」と「持続可能性」が両立した未来社会を構築するための2つのキーファクターとして、本研究では、人間と社会を拡張する強力なドライバーである革新技術による変革である「3X」の活用と、人々が協調して新たな価値をつくり上げていく未来のコミュニティである「共領域」の構築を提案したい。
——-
疲れました。
一休みです。
本論文は、情報エントロピーが高すぎて
(内容が体系づけられてなく、バラバラ)
当方が、情報エントロピーを低くする
(内容を体系づけて、整理する)
作業に疲れました。
一休みして、再復帰します。
それまでは、この項、中締め。
再復帰まで、ごきげんよう。
——-
コラム 科学技術と人間のよりよい関係づくりのために
第 3章 日本が先駆ける「目指す未来社会」の実現
日本から発信する「未来社会の実現方策」
未来創造のフロントランナーとしての日本の役割
日本人の特性・価値観を踏まえた
「5つの目標」 「5つの目標」の連携で、未来への流れを加速する
コラム 今、求められる現状課題の克服
第 4章 日本が目指す未来の「豊かさ」
豊かさ向上のための3つの目標
目標A[健康維持・心身の潜在能力発揮]
背景 長寿化による財源圧迫と、技術革新がもたらす格差
目指す未来 「守りの健康」から、「攻めの健康」へ
未来目標 あらゆる人の「充実した心身で社会に関わる人生」の実現 31
方策1 革新技術によるヘルスケアインフラの整備 32
方策2 産業と融合するRRIの開発による革新技術実装の推進 34
方策3 持続的な医療・介護保険制度への改革 36
未来年表 2040年問題の解消が中間マイルストーン 38
目標B[多様性の尊重とつながりの確保] 39
背景 コミュニティの流動化が生む「つながり格差」と「孤立リスク」 39
目指す未来 望まない孤立から解放された、人生の幅が広がり、共創が進む社会 40
未来目標 孤立ゼロ×つながり充実で、「価値共創」を加速する社会 42
方策1 「孤立リスク予防システム」の構築 42
方策2 CXの実装による新次元の共創の場構築 46
未来年表 技術進化と歩調を合わせた実装を目指す 48
目標C[新たな価値創出と自己実現] 50
背景 生産年齢人口の減少と、革新技術による労働代替の進展 50
目指す未来 個人の潜在能力を活かした、新たな社会価値の創造 50
未来目標 労働の義務からの解放と、自由な活動と学びの充実 53
方策1 自由な労働の実現と、価値創造のための「共領域」の創出 53
方策2 社会格差を払拭する新たな人の支援制度の構築 58
方策3 「生涯100年学びシステム」への転換 59
未来年表 「共領域」による価値創造システムの実現 60
第5章 日本が目指す未来の「持続可能性」 62
安全安心と持続可能性 63
目標D[安全安心の担保] 65
背景 自然災害や感染症の脅威に加え、仮想空間の安全確保が新たな課題に 65
目指す未来 現実×仮想の安全安心担保によるレジリエントな社会 66
未来目標 自然災害・感染症の被害最小化、仮想空間のトラスト最大化 67
方策1 個人に最適化された「パーソナル防災」の実現 68
方策2 現実×仮想による社会の冗長化 69
方策3 仮想空間の信頼を形成するメタ・トラストフレームワークの整備 70
未来年表 現実・仮想の両空間で安全安心を確保する 71
コラム 仮想空間での安全安心の担保に向けて 72
目標E[地球の持続可能性の確保] 7373
背景 豊かさの追求が引き起こした地球環境の毀損
目指す未来 資源消費を抑えた「持続可能性」と「豊かさ」の両立
未来目標 「地球1個分」の生活の実現と、環境配慮行動を通じた豊かさの実感
方策1 DX・BXによるロス削減、脱化石資源
方策2 「しん・もったいない」による価値観・行動変容
未来像 「地球1個分」の生活の実現の姿
未来年表 価値観と行動の変容で「地球1個分」の生活を実現する
おわりに 2070年へのマイルストーン
短期 2030年までに、既存技術による現状課題への対処が進む
中期 2040年までに、仮想空間などの次世代革新技術活用が本格化
長期 2050年までに、人とAIが共存する「自律分散・協調」型社会に
超長期 2070年までに、22世紀を見すえた持続可能社会が実現 変革のカギは「変化を受け入れられる社会」の構築
コラム 人間中心の視点で中長期の未来を予測する
謝辞 50周年記念研究
研究担当者
本件に関するお問い合わせ先
本研究におけるアンケート調査は、特に断りのないかぎり、三菱総合研究所が実施する生活者市場予測システム(mif)のアンケートパネルによるものである。
本文中では、「当社mifアンケート調査」と記載する。
参考
生活者市場予測システム(mif) https://mif.mri.co.jp/ iv
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