「贈与経済2.0」を考察していきます。
贈与経済2.0 (by 荒谷大輔)を一読しました。
資本主義の先にあるべきものとして贈与経済2.0を思い立ったいきさつは理解できました。
一番驚いたのは、贈与経済2.0を社会に実装する試験を近々行うということでした。
・ブロックチェーンを使い、贈与に基づき贈与を受けた方が「感謝」のトークン(ポイントみたいなもの)相手に発行する。
(趣旨に賛同したブロックチェーン専門家の方が手弁当(贈与)で協力して構築してるとのこと)
・「感謝トークン(ハートトークン)」を多く有することで、その人に対する社会信用が高まる。
・Discordで、議論しながらみんなで作り上げているみたいなかんじ。
・ただ、「感謝トークン(ハートトークン)」を使い、どのように経済を回していくのかは明確に説明されていない。
・いろいろなことが、完備されてスタートではなく、走りながら考える、という感じを受けました。
ただ、「感謝トークン(ハートトークン)」を既存の貨幣と同様な使い方をすると、貨幣の発行形態が違うだけで、それ以外は既存と同じ状態になるのではないだろうか。
おまけに、貨幣をコントロールできない不便な状態で。
どうなんだろう。
理論的すぎる、抽象論的すぎる、贈与経済2.0であるので、実際の社会でどのように贈与経済2.0が機能するか具体的な説明がほしい。
現在の資本主義経済社会(A)を突き動かしているのは、人間の生存本能心理だと思います。
1.生存したい
2.故に、生存を保証しやすいように可能な限りの多く物質、サービスを求める
3.故に、物質、サービスの交換ツールであるオカネを可能な限り多く求める
このしくみの中で、贈与経済2.0の理論的背景を有するハートトークンは、物質の交換ツールの中の1つに位置づけられると思います。
現在の資本主義が全て、贈与経済2.0に置き換わっても、人間の生存本能心理に始原を持つ現在の資本主義経済社会(A)のしくみ(上記 1.2.3.)に影響を及ぼすことはなく、物質の交換ツールのオカネがハートトークンに変わるだけで、「お金を稼がずに生きていける世界」の実現は難しいと思われます。
「お金を稼がずに生きていける世界」は、人工知能で、全てが生産され、物質が空気のようにあふれ、交換経済自体が意味を持たない時代(※)が来ることにより実現される可能性が高いと思います。
(そこに行きつくまでに、北欧諸国のような社会体制を通過してもいいかと思いますが)
(※)
・ケインズが「わが孫たちのための経済的可能性」で述べている社会
「私たちの孫の代になれば、金銭を貯めこむ習慣はある種の病気だと思われるようになるだろう。金銭に執着することは、どちらかと言えば犯罪に近く、精神病のように見なされるだろう」
・アルトマン:AIに雇用が奪われる未来に備える
https://jp.reuters.com/article/tech-ai-worldcoin-idJPKBN2Z40JD/
p214
Aの「正しさ」を主張する代わりにBの行動の前提を問い直すようにBに要求するというのが、ゼロ地点ルールにおける一般的な議論の手法になる。
この手法は有効でないように思える。
「前提を問い直しさせる」というのは、「正しさ」を競い合うことの裏返しで、同値の行為になるのではなかろうか。
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